2022.09.10
「木下晋展 明日へ」ギャラリートーク備忘録3
2022・9/3ギャラリートークの様子
こんにちは
新潟県見附市
みつけ市民ギャラリー(ギャラリーみつけ)です。
9/3ギャラリートークと作家から伺ったお話をまとめています。
彫刻制作の経験からか、肉眼では見えない皴や肉を描き込む。重なる皴や肉感が10Bから10Hの22種の鉛筆の階調によってかたちになっていく。木下が作成した鉛筆のグラデーションシートからも鉛筆の可能性を模索した様子を窺うことができます。
「ハルさんの大作はどのくらいの期間で描き上げたのですか?」と質問したところ、この頃は1~2か月で描いていたといいます。
「103歳の闘争Ⅰ」2003・「101歳の光芒」2001 モデル/小林ハルを望む
しかし今は、妻の介護をしながらの制作であり、最新作「夢想」は完成まで約6か月かかったとのこと。体調や身体の様子が変化していく妻には長時間の介護が必要となっています。その日常の中の変化にこそ美を見出す木下の眼。木下も初めてだといった今回のポスターとチラシの作品制作途中の画像は、6月に自宅を訪問した時に撮影したもの、目元の描画の途中でした。8月、完成しシートで届いた「夢想」の美しさには息をのみました。
「夢想」2022 モデル妻/君子
現代美術作家荒川修作は木下の過去を聞き、「君は作家として最高の環境に生まれ育った。その母親を君は描くべきだ」と言いました。それまで嫌悪し憎しみの対象であった母セキ。ニューヨークから戻った木下は独自の作品を作るため鉛筆での大作を描き始めます。認知症で徘徊をする母を家に留める目的もあり、母をモデルとした作品を制作。100円でもバイト代を渡すと何時間でもじっとしていた母は良いモデルだったといいます。
「流浪」1981 モデル母/セキを望む